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■奥村禎秀プロフィール

『第一部 水族館の楽しみ方』

第1回「水族館を倍楽しむ方法」 第2回「水族館物語」 第3回「いい水族館わるい水族館」
第4回「水族館の形」 第5回「番外篇」

第6回「水族館、隠れた見所」

第7回「第6回世界水族館会議」 第8回「 水族館と万博 」  

『第2部 中国の水族館〜熱烈的超最新レポート!!

第1回 大連老虎極地水族館

第2回 青島極地水族館(チンタオ キョクチスイゾクカン)

   
第3回 中国水族館(番外篇)        

Music-On A Slow Boat To China (Bass Ray Sasaki)
第3回 中国水族館(番外篇)
会場入口
会場入口
関係業者の出展
関係業者の出展
歓迎催し
歓迎催し
歓迎催し
歓迎催し
ポスターセッション
ポスターセッション
ポスターセッション
ポスターセッション
 
 

 
 

このサイトの読者の中には、まだ覚えていらっしゃる方もおありかと思いますが、以前「大人の水族館/第6回」の記事において、2004年12月、カリフォルニア・モントレー水族館で開催された「第6回世界水族館会議」に関する報告をしたことがありますが、その4年後の2008年10月、今度は中国の上海で世界水族館会議が開催されました。

ご報告するには大分昔の事なので、いささか恐縮ではありますが、今回はこの上海での会議の状況についてお伝えしようと思うのです。 と言いますのも、つい先頃、近年暑く沸騰する中国に於ける水族館ブーム取材のため、中国に渡る機会がありまして、その移動途中の中国「南西航空」の機内で、たまたま或るPR用のCM上映を目にしたからなのです・・・。

今回は、このPR用のCMの内容をきっかけとするお話しです。
と言いますのは、2004年のカリフォルニアでの水族館会議では、このままでは絶滅の可能性が懸念される『鮫』の保護が、今後の重要テーマとして語られておりましたから、
・・・となると次の上海での会議では、まして『フカヒレ』スープを好む本場中国としてみれば、世界に向けて一体どのような対応をするつもりなのか?
「・・・クラゲは?」
「・・・漢方薬のタツノオトシゴは?」
そんなわけで当然のことながら、この上海での世界水族館会議は、私の密かな楽しみだったのですが、結局のところ、鮫、クラゲの保護については、上海の地元水族館によるプレゼンテーションがあったものの、余り明確で断固たるニュアンスは何処にも見当たらない内容と言わざるを得ない、いささか歯切れの悪いものでした。
タツノオトシゴについては中国以外の国から、「保護」というよりも「繁殖」に関するプレゼンテーションが行われるに止まりました。

で、それから2年、今年たまたま目にした中国南西航空の機内上映CMでは、な、なんと『フカヒレスープ』をテーマに、海洋環境についての企業メッセージを訴えていたのです。
米国NBAの人気選手で、他を圧する長身で活躍する中国出身のヤオ・ミンが出演するこのCMでは、鮫を捕まえたそばからヒレだけを切り取り、そのまま海に棄てている何処かの国の漁船、ヒレを干す漁村(日本らしくも見える・・・)などが映し出され、最後に豪華な中華料理店のテーブルについたヤオ・ミンの前に、フカヒレスープが運ばれて来ます。
するとヤオ・ミンを囲む客が、待ち構えた様に一斉に手を伸ばします・・・が、しかし、一瞬速くヤオ・ミンが真っ先に手を伸ばし、他に先駆けてフカヒレスープを拒否します。

すると周りの客全員も、バツが悪そうに伸ばした手をフカヒレスープから戻す・・・というストーリーなのですが、つまり、このCMの狙いは、『海洋生物の食物連鎖の頂点に立つ鮫を守ろう』というコンセプトであり、このCM上映は、「ついに生物多様性の重要性について中国も考え始めている・・・」という証しの一端だったのです。

さて、話しを「第7回上海国際水族館会議」に戻しましょう。
参加45カ国、参加者700名、従来のIAC記録を上回る会議で、上海水族館がメイン主催館になっていました。
会議では、中国の動物保護局が20,000種以上の水生生物を対象に、現在100,000平米の敷地に200種の生物保護に乗り出したという報告があり、子供たちの歌う“Make the ocean more beautiful“が会場に響く中、この上海国際水族館会議のテーマは、まさしく『環境保護』でありました。

最初のスピーカーは、この「大人の水族館」でもお馴染みの、「モントレー水族館」の館長でした。
水族館の役目は『環境保護』というものを、対策、教育という側面で如何に未来につなげていくか、その役割、業績などに於ける持続可能な水族館の果たすべき意義と重要性についての指摘がなされました。

  1. 海洋保護区の規制に関して、法律的な領域に於いても参画する。
  2. シーフードについては、ウォールマートなど、スーパーマーケットの協力を得る。
  3. 海の回復には、国を巻き込んだ啓発運動を展開する。
  4. 水生生物の保護については、従来の水族館での保護活動のみならず、来館者たちとのリレーションシップの重要性、そして教育に於けるネットワークつくりなどを挙げていた。

『これらの事が成し遂げられるためには、我々自身が「海洋」と「生物」の保護のモデルになる「水族館」でなければならない』・・・いつも、世界の水族館の「お手本館長」発言は極めて重く、今暫くは、魚介類の食事を控えめにしている私ではありました。

5日間の会期中、様々なプレゼンテーションがありましたが、その中で「鮫」のプレゼンをした水族館は、中国最古の水族館である、これまたこのサイトでも以前にご紹介しました「青島水族館」だったのです。ちなみに中国には水族館が現在67館、多分今後5年以内に100館に近づくでしょう。
青島水族館は1932年にドイツ租開区に建設された中国最古の水族館です。
剥製も多く、サメの肌やクラゲの観察に関するネット配信活動への取り組みに対するプレゼンテーションがあり、『フカヒレを食べるのを止めよう』というスローガンのもとに、特に子供を対象とする「鮫保護」の重要性から、フカヒレを拒否するための教育や観察クラブの運営活動についてのプレゼンテーションをしていました。
このプレゼンテーションを聞いた時、私自身の印象としては、中国の食文化に深く根付いている「フカヒレ」料理を禁止するための教育などというものは、果たして現実的に可能なのかどうか?・・・実際のところ、何とも疑心暗鬼ではあったのです。
がしかし、この稿のはじめの方でも述べましたが、この二年後にあたる今年、中国の国内航空で見た機内CMによって、この国も本気で自然環境を考え始めたんだなぁ・・・と、改めて痛感させられたのです。

‘フカク’にも二年前、上海で地元の「フカヒレスープ」を食し、乱獲で問題になっていた「旬の上海蟹」にも舌鼓を打ってしまい、この様な中国的食文化が熱烈的に染み付いた私にとって、水族館での生態観察を基本にした繁殖研究は非常に大事なんだ!水族館の役割は大切だ!私は身を呈して伝えなければ・・・と、反省も新たに、あの『大地震』のまさに一日前、青海の州境を離れたのです。

 

 

蝉麻呂


俳句

蝉麻呂
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