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■奥村禎秀プロフィール

『第一部 水族館の楽しみ方』

第1回「水族館を倍楽しむ方法」 第2回「水族館物語」 第3回「いい水族館わるい水族館」
第4回「水族館の形」 第5回「番外篇」

第6回「水族館、隠れた見所」

第7回「第6回世界水族館会議」 第8回「 水族館と万博 」  

『第2部 中国の水族館〜熱烈的超最新レポート!!

第1回 大連老虎極地水族館

第2回 青島極地水族館(チンタオ キョクチスイゾクカン)

   
第3回 中国水族館(番外篇)        
第7回「 世界水族館会議 」

ケルプ大水槽

グラゲ水槽

会場入り口

説明員

会場内部の映像機器展示

各国の水族館関係者の情報交換

子供のための説明員

遊具

子供のためのQ&A装置

夜の水族館関係者の見学会

ポスターセッション
 

昨年(2004年)の「12月5日〜10日」、米国のカリフォルニア州モントレーで「世界水族館会議」が開催されたのです。

これは4年に1度の世界会議で、今回の主催館の「モントレー水族館」は、前回紹介した、いわば最近の世界の水族館の「お手本施設」なのです。


30年前のモントレー水族館建設中の風景
モントレー水族館の現在の写真

女性館長のジュリー・パッカードのお父さんは有名なコンピューター会社の創始者であり、地元出身の有名な作家には、あの「エデンの東」「怒りのブドウ」等のスタイン・べックがおり、またヘンリーミラーがその晩年を過ごしたこともある風光明媚な土地柄など、話題に事欠かないロケーションも相俟って,この「鰯が来なくなって寂れていた海の町」を、地域の『水族館』が見事に蘇生させたのです。

その意味で開館当時は、地方自治体に於けるウォーターフロントの成功例としても名を馳せたのです。

俳句
蝉麻呂

さてそこで、参加43カ国、参加者数550人にも及ぶこの「大会」の中身はと言うと・・・
まず Making  Connections, Inspiring Conservation (海洋保全の推進のために手をとりあおう)がテーマで、「海洋保護と海洋保全を前進させるための有効な戦略を皆で話し合おう」という趣旨の会議でありました。

会議では、海洋生物の飼育の現状や、各国の水族館についての説明などが行われ、会期は6日間に及んだのですが、その中で私が印象に残った2,3のプレゼンテーションについて、以下に紹介してみましょう。
1)

(ウガンダにおける淡水魚について) ジュリアン・ホワイトへット氏               
1991年、フランスNPOの仕事の一冠として、ビクトリア湖の観賞用淡水魚をエイズに罹った子供達に採集してもらい、それを先進国に輸出して、その収入で薬品購入と医療施設を建設するプロジェクトをたちあげました。
魚の飼育保管技術は水族館のノウハウを活かす事でうまく行く筈だったのですが、空港までの輸送が長いのと、淡水魚が想定していたより売れず、結局計画は頓挫したらしいのですが、魚がこの様に社会性を持つことに感動致しました。
とかく水族館の華やかな面だけしか見ていない我々は、反省・・・?

   
2)

(LSSデザイン論)ジョエル・ジョンソン氏

水族館は基より、今の文化施設が訴えるところは、まさに「地球環境の危機」であるにも関わらず、その施設としての建物や構造物には配慮が足りないのではないか。 
「結局のところ、魚も人間も地球を食べつくしているんですよ!!」        
会場はシーン・・・確かにイルカのショウ・プールに要するエネルギー消費は多大なものであり、又、消毒方法にも問題がある。 
会場の人々の表情には、一段と暗い陰りが・・・
建設の為のコンクリートはフライアッシュセメントにするように。
※フライアッシュ セメントー火力発電所などの微粉炭ボイラーの燃焼排ガス中から回収された石炭灰を混ぜたセメント。
鉄はリサイクル資材を使用する事、
擬岩のFRPはリサイクル出来ないのでよく考えなさい 等々、全員お話だけは納得・・・            
これまた水族館の華やかな面しか見ていない我々としては、思わず反省しきり?

   
3)

(Seafood WATCH)モントレー水族館

この発表内容には思わずビックリ・・・つまりキャビア、スズキ、タラ.タラバガニ、タイ、ヒラメ、カレイ、マグロ、サメ(フカヒレ)等々、他にもまだ多数の魚がここでは指摘されたのですが、要するに発表の趣旨というのは、つまり「これらの魚を食べるな」ということなのです。
この「食べるな」という魚には赤色の標示、食べていいもの緑色 少しは注意を払いつつ食べてもいいものは黄色と、それぞれ三色に色分けされており、とにかく限られた海の資源を守れ!という強い主張なのです。
牛肉が売れなくなったものだから、そんな事言ってるんだろう・・・と疑う我々を尻目に、「これからの水族館の新しい方向はこうなんだ」と言わんばかりに堂々とプレゼンされると、聞いている方も段々そんな気持になって来て、その夜シーフードレストランに行くと、これまたビックリ、なんと昼間の赤黄緑の「色分けメニュー」という念のいり様で、「今日は奮発してカニでも」と思っていたら、水族館の周辺レストランはメニューが少なくて、もしも日本でこんなことしたら、恐らく暴動が起こって水族館の魚が全部略奪されるかも?
・・・などと呟きながらも、
「どうすれば資源を大切にしながら、ヒラメの縁側がたべられるか?」
ついそんな甘い事を未練がましく考えてしまう自分に、反省もしていたのです。

ほかにもポスターや論文の展示、そして小セミナーなど、今回は大変に有益な会議ではありました。
次回の会議は、中国の上海で2008年に開催されるのですが、さてその頃ワタシの好物の「フカヒレ」は、果たしてどうなっているのだろう・・・?

俳句
蝉麻呂
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