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■奥村禎秀プロフィール

『第一部 水族館の楽しみ方』

第1回「水族館を倍楽しむ方法」 第2回「水族館物語」 第3回「いい水族館わるい水族館」
第4回「水族館の形」 第5回「番外篇」

第6回「水族館、隠れた見所」

第7回「第6回世界水族館会議」 第8回「 水族館と万博 」  

『第2部 中国の水族館〜熱烈的超最新レポート!!

第1回 大連老虎極地水族館

第2回 青島極地水族館(チンタオ キョクチスイゾクカン)

   
第3回 中国水族館(番外篇)        
第8回「 水族館と万博

マンモスの写真(ロシア館のもの)
※人気展示の冷凍とは異なる

マンモスの写真(ロシア館のもの)
※人気展示の冷凍とは異なる

トヨタ 介護車

ドラゴンベイビー

碧南水族館全景

碧南水族館入口

水槽の中のドラゴンベイビー

おひつまぶし

放散虫
 
 
 

話題が少し古いのですが、2005年9月25日、「愛、地球博」が何事もなく無事終わりました。幕開けの時、大方の人は「何故、今また・・・?」と感じていたかも知れません。その中の一人に、正直言って私も含まれていたのです。
ところが、久しぶりのお櫃まぶし(※注釈参照1)に誘われて、不覚にも名古屋に行ってしまいました。

よく晴れた7月1日、色とりどりの万国旗と意匠様々の建物、そしてケーブルカーが空中を走り,ウキウキとした人の流れと、遠方から来たらしい人の好さそうなオジサン、オバサン(日本の田舎のオジサン、オバサンはまだまだ愛すべき人が多い)の大きな土産袋・・・これらを見た時、私の頭にあった「万博が何じゃかんじゃ!」というよこしまな考えが一気に飛んでしまい、「楽しいジャン、国際的なお祭りジャン!」と思った瞬間から、ついエンジンがかかってしまい、話題の呼びものでは、待ち時間を前後の人々にぴったり挟まれながら、長時間身動き出来ずにじっと耐え忍ぶというマゾヒステイックな悦びを、列の人々と共に楽しく分かち合い、連帯感を深め、戦時中の防空壕の中はきっとこんなではなかったのかしら・・・などと思いつつ、幾つかのパビリオンを見て廻ったのです。


俳句

蝉麻呂

人気パビリオンにはそれぞれの工夫があり、特に二足歩行のロボットなど、老後はこれで介護してもらいたいと思うほどの出来栄えで、水族館見学や徘徊防止にもいいかしらと、いささか心細い思いも巡らしたものです・・・。

さて、ここからが本題です。             
実は万博と水族館の関係はとても深く、以前に第五話で述べたヨーロッパの水族館の関連で「1851年ロンドン博」の建物は、大木を中心にした植物園の様なパビリオンであったらしく、ほんのわずかにガラス水槽の中の水草や淡水魚の展示が、教育ママの関心を引いたようです。
1890年頃は、ヨーロッパ各地で今のような水族館が出来ており、顕微鏡の発達で放散虫(※注釈参照3)が意匠に取り入れられていたのです。

そしてその結集が「1900年のパリ万博」だったと言っても過言ではない様です。     
テーマはジュール・ベルヌの「海底2万マイル」で、海底疑似体験のために大型ガラス板を使用した容積20t以上の水槽を設置、潜水夫や人魚も泳ぎ、イソギンチャクやサンゴ、それに魚も入った水槽が大いに人気を博したのです。   
今回の「愛知万博」もその流れを引き(?)、名古屋城の金の鯱(しゃちほこ)のレプリカが名港水族館に展示されたのです。


俳句

蝉麻呂
しかし、一番水族館と関わりがあったと言えるのは、「碧南水族館」にクロアチアから37年ぶりにやって来た「ドラゴンべイビー(サンショウウオ)」(※注釈参照2)でしょう。
華やかな万博会期中の陰で、この目の退化したサンショウウオはひっそりと展示されていたのです。
私は胸を弾ませ、万博会場から約2時間かけて行きました。場内を探し回るくらいに小さく地味で、岩陰にじっと身を潜める「ドラゴンべイビー」と面会した時は、ドラゴンべイビーに何やら目のない目で、「何でまたご苦労さん・・・水族館男!」とでも語りかけられたような気がして、私は思わず、小さく(将来は大きくなるらしい)目立たず、平凡に暮らしていた遥か故郷の地から、いきなり東の果てのこの国まで連れて来られた不思議な動物に目を凝らしながら、『お前こそ、洞窟男だろっ!!』と言わんばかりに、どこか岩陰に潜んでいる筈の「エルメスさん!!」を探してしまいました・・・。


俳句

蝉麻呂


(注1)お櫃まぶし・・・名古屋名物。うなぎの蒲焼を短冊にして蒸篭で蒸した食べ物。
わさびいりお茶付けなどもいける(お薦め店-蓬莱軒)   

(注2)ドラゴンベイビー・・・ヨーロッパ最大のカルスト石灰岩地域デイナル山脈の洞窟に生息する目のないサンショウウオ。地元住民が伝説上のドラゴンと結びつけたのが名前の由来である。
学名(Proteusu anguinus)  

(注3)放散虫・・・放散虫目に属し海生の原生動物の総称。 骨格ないし殻で構成され仮足を持ち終生浮遊生活を送る。現在の石油は数億年前に生息していた放散虫が大きな役割を果たしていたといわれている。さまざまな形が建築やその他のデザインに影響を与えたといわれている。

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