《田中信一の正調音響塾》
の開設にあたって

2007年9月
「正調音響塾」運営委員会一同

この度、当代最高のレコーディング・エンジニアの一人として位置付けられております田中信一氏を塾長にお迎えして、《田中信一の正調音響塾》の開設を実現でき ...

ご挨拶

2007年9月
塾長:田中信一

《田中信一の正調音響塾》開設にあたり、ご挨拶を申し上げます。 私、田中信一はこれまで、自身のエンジニアとしての技術向上...
カリキュラム|SEASON-1


#25 音楽ミックス作業について1 [音楽CD Mix]

今日の天気 : [ ]
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大島です。昨日、今日と二日間で音楽ミックス作業を行いました。先生は近年映画やドラマの音楽の録音、ミックスを担当する事も多く、この場合、一日で20曲から30曲という数のミックスを行うことも多々あります。基本的にミックス作業でのアシスタントの仕事は、トラックダウンや、マスターのデータ管理、ミックス中に使用するアウトボードの結線や、パッチになります。塾のスタジオではプロツールスでの内部ミックスになるため作業の中心はトラックダウン後にマスター用のフォーマットでデータを書き出し、マスターのフォルダにデータを納めていくことになります。近年多くなってきているプロツールス内部で完結するミックスの場合、人とソフトを結ぶインターフェイスがキーボードとマウスのみとなる為、これらを完璧に使いこなす事が重要で日頃から一つでも多くのコマンドを覚え、ミスを無くす事が大切になってきます。アナログレコーダーや3348などのレコーダーとアナログコンソールの組み合わせでのミックスが中心の時代は(今でもこの組み合わせはありますが)レコーダーの操作からコンソールへの立ち上げ、アウトボードを積み上げ結線し、レコーダーの操作を間違えたら録音物が消えてしまう状況の中、ミックス中も非常に緊張感をもって作業が行なわれていたようで、その時代に比べるとミックス中にアシスタントの行う仕事は減っているのかも知れませんが、そのかわり一秒でも作業が早く進むようPCのシステムを中心に知識を付けて、緊張感を高める事が重要だと思っています。実際、今回の作業のように曲数が多くなると一曲あたり数秒短縮する事でもトータルの作業時間を大幅に縮める事が出来ます。これはスタジオとしての評判やアシスタントとしての評価にも影響してきますので、常に注意していきたいと考えています。
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#24 楽器別マイクの種類について[マイクロフォン]

今日の天気 : [ ]
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田中です。
今回は私が普段、一般的に使用しているマイクを楽器別に分類してみよう。以下に一覧を記すので、目を通しておいて欲しい。なおこれは言わば「標準セッティング」であるから、必ずしもこの通りとは限らないことも忘れてはならないよ。
さて、楽器の略号は全てわかるかな?
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#23 ピアノ・ギターの録音について[マイクロフォン]

今日の天気 : [ ]
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田中です。
以前drs、bassなどの私の使用マイクなどを説明してみたが、今回はPiano、Gtrの使用マイクと使い方などを話してみよう。まず、すべての楽器に対していえることだが、このマイクでなければいけないという考え方はない。それらはスタジオの条件などに左右されるものであり、この後に述べるマイクがこの楽器に対して完璧であるということではないので注意されたい。
Pianoの場合、 マイクはショップス CMC55U, 56U 、 AKG C414TL など。実はマイクの種類よりマイクの立て方のほうに問題があることが多い。私はPianoの蓋のなかにマイクを立てないし、条件が許せば距離は1メートル以上楽器から離すようにしている。蓋の中にマイクを立てると直接音が多くなるのと近接効果により低域が膨らむからだ。そうすると余計なEQなどをしなくてはならないしEQをすることで周波数の位相関係も悪くなってしまう。基本的に楽器の音を録るにはdrsもpianoもそうだが楽器全体の響きを録音することを考えたほうが良いし、それが良い結果につながると思う。
GtrはまずAgt、Fgt、Ggtなどの生Gtrのマイクから。これも(プロ用)コンデンサーマイクだったら何でも良いと考えている。これら生Gtrの場合、楽器自体の音が小さいのでマイクプリのレベルを相当上げなければならないが、マイクプリを上げすぎるとS/Nも悪くなるし、少し歪みっぽくなったりしてしまう。その点、コンデンサーマイクならマイク自体のレベルも高い(アンプ内蔵だから)のでその心配は軽減される。具体的なマイクとしてはAKG C460, 535, 414 、ノイマン U67, 87 などだろうか。マイクの立て方の説明でよく「サウンドホールを狙って」とあるが、これをやると低域の響きが大きすぎて音にならないので、少しサウンドホールをはずしたマイクの立て方が良いのではないかと思う。またAKG C460, 535などは低域がある程度制限されていて使いやすいマイクといえよう。
Egtrはギターアンプで鳴らした音を拾うが、ミュージシャンによってはアンプの鳴りをよく研究していて音を収録するマイクの位置を決めている人もいるので、その場合はその位置にマイクをセットする。私の使用しているマイクはnearにシュアーのSM57、farにノイマンU87であるが、SM57にはオーディオテクニカのサスペンションを使い、ギターアンプの床からの振動より逃げている。これが意外と効果的である。
これに限らず言えることは、なるべく余計な音をとらないという事。いろいろ考えて、よく音を聞いてマイクをセットすると良い音に近づいてくるものだよ。


#22 ナレーション録音について・1[声の録音]

今日の天気 : [ ]
�哇
大島です。今日は講演会用のナレーション録音を行いました。スタジオでナレーションを録音する場合、アナウンスブースを使用しますが、ブースもスタジオによって広さや音響特性が違う為、理想の録音を実現するには多くの経験とノウハウが必要になってきます。音響塾のブースは比較的小さく、響きがデッドなため、残響音の少ないナレーターさんの直接音を録音する事ができます。この場合、広く、残響のあるブースでの録音に比べてパワーに欠けますが、声やマイクの持つ特徴を素直に収録できるように感じました。
 マイクポジションも非常に大切で、ナレーターさんの性別や、声の特徴、話し方の特徴によっても変わってきます。男性であれば胸から口元のあたりで声が響いており、女性の場合は口元から鼻のあたりで声が響いているため、それを目安にセッティングするようにしていますが、当然ナレーターさんによっても声の特徴は違うので、マイクの振動板を何処に向けるかは多くのノウハウが必要かと感じています。
少し話は逸れますが、今回の録音では自分でセッティングから録音まで行った訳ですが、アシスタントとしてナレーション録音に参加する場合はマイクセッティングをアシスタントに任せるエンジニアの方が多い様に日頃感じています。これは責任重大で常日頃から先輩エンジニアのマイクアレンジを頭に入れ、そこから録音される音の特徴を記憶して、ノウハウを積み重ねていく必要があります。マイクセッティングをまかされる事で、作業に対する参加意識は強くなるのです。
 実際のナレーション録音の流れとしては、ナレーターさんをブースに案内すると共に自分もブースに入り、挨拶を行いつつ声の特徴を把握し、それをマイクセッティングに反映させます。そして、ブース内のキューボックス、キューランプ等の説明を行い、「では、よろしくお願い致します」と一声かけてコントロールルームに戻ります。その後、テストで原稿を読んでもらい、HAのゲインで録音レベルをとります。レコーダーがアナログの時代はなるべくS/Nを稼ぐ為に大きなレベルで録音していた様ですが、ProTools等、デジタル録音を行う場合にS/Nはそれほど気にならないので、EQ等の整音時の音処理でのレベルの増幅分を意識して、ProToolsでのピークメーターが-10dB程度に振れる具合で録音するようにしています。
 また録音時は人間相手の事なので気配りが大切になってきます。テイクが重なってきた時は休憩をしてもらったり、仕上がりの方向性に迷って場がピリピリしている時や、エディット作業などで待たせている時などは一声かけてリラックスしてもらう場合もあります。
 録音を終えたらマイクの吹かれによるポップノイズリップノイズ、息継ぎのブレス等を消して音声波形を整えていきます。収録後のこの作業は逐一、ProTools上での手作業によるものが多いので、待ち時間を少なくし少しでも早くできる様、日頃から練習し時間短縮をする努力が大切だと思っています。




その後、EQ、コンプを中心に音を仕上げていく作業となります。
 一通り整音が終わったら、その音色をチェックしてもらいつつナレーションのタイミングや間を調整していきます。
 声の録音についてはまだまだ書ききれない事や分からない事が多いので、こまめにレポートしていきたいと考えています。


#21 パッチ盤について[アナログ調整卓]

今日の天気 : [ ]
�哇
お久しぶりです。大島です。
業務用のスタジオの多くはパッチ盤が設置されています。これは各機器の接続を素早くできるし、自由度の高い接続でフレキシブルに作業を行えるといったメリットがあります。デメリットとしてはダイレクトに接続するより音質が若干劣化するらしいことや、接触不良を起こしやすいなどですが、その便利さや、自由度の高さから、設置するケースが多い様です。
業務用スタジオでのアナログ・オーディオ回線には多くがバンタムパッチベイを採用しているようですが、これはフォンジャックより小型のジャックで、少ないスペースでパッチ盤を設置できるといったメリットがあります。バンタムプラグは、ミニプラグ、タイニーテレフォンプラグ、4.4mmプラグといった呼び方もされます。パッチ盤の機能としては各機器の接続、チャンネルの入れ替えであり、僕も作業では毎日のようにパッチによって結線する訳ですが、なにせたくさんのパッチがあるため、ミスをしてしまう場合も時々ありますので、いざ録音を行うとなった時に、音がレコーダーまで来ていない時は、一番最初にパッチに間違いが無いか確認するようにしています。
通常は上段が信号の出力で下段が信号の入力となっており、前面からのパッチ接続がなくても上段と下段が接続されている仕組みをノーマライズと言うそうですが、このノーマライズの方式にもフルノーマル、ハーフノーマル、ダブルノーマルの三種類の接続方式があるので、その使用には注意が必要です。


これらとは別に上下が全く接続されていないものをストレート接続といいます。これは前面側にパッチプラグを差し込んだ時のみ信号が流れるようになっています。
以下はイメージ図です。





フルノーマルは出力側にプラグを差し込んだ場合、信号は差し込まれたプラグへ流れ、下段へは信号は送られなくなります。入力側にプラグを差し込んだ場合は、上段からの信号はキャンセルされ、前面のプラグから信号が入力できます。前面側にパッチ接続をした時は必ず上下の信号接続が遮断される仕組みとなっています。





これに対し、ハーフノーマルは出力側にプラグを差し込んだ場合は、上段からの信号は遮断されないので、信号を前面側出力プラグと背面側の両方へパラ出しする事が出来ます(パラレル接続)。そのため音声を取り出してエフェクト処理する時などのように、信号を元の音声とミックスする作業の多いレコーディングスタジオの多くはこのハーフノーマル接続が多い様です。出力された信号にエフェクターを接続し、そのエフェクトアウトを入力側に接続すれば、インサートを行う事が出来ます。このように入出力の両方にパッチをした場合にはフルノーマル同様、上段からの信号は下段には流れません。





ダブルノーマルは、出力側に単独でプラグを差し込むとハーフノーマル同様、前面と背面側にパラで信号を送ります。ただし前面の入力側に単独でプラグを差し込んだ場合でも背面側と上段の出力回路に信号が流れる仕様となっているようです。そのため、信号の入力だけを行う場合は前面の出力側にダミープラグを差すなどして、対処しなければなりません。このダブルノーマルは接点の構造上、接点不良などが起こりにくいというメリットがあるらしく、接触の不具合による音声遮断を恐れる放送局などで採用されているようです。





ちなみに音響塾のスタジオでは上段がアウトプットで下段がインプットのパッチ盤と、イン、アウトが逆のパッチ盤が混在しており、接続方法においても、フルノーマルとハーフノーマルが、接続機器によって混在されています。スタジオによって様々な仕様のパッチ盤が導入されている事は多いようですので予めその仕様は把握しておく必要があります。
確実なパッチが行えるようになる事はアシスタントとしての第一歩であると常日頃感じています。


#20 Professional用マイク [マイクロフォン]

今日の天気 : [ ]
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田中です。
今日は都内の音楽スタジオでよく使用されるマイクロフォンを紹介しよう。
一般的にプロ用と呼ばれるものは、全てオールマイティな用途として使用できる程のクオリティ、性能を備えているといっても良いだろう。ある意味どれも優秀なマイクであるからね。
ただしルーム・アコースティックや楽器などの条件に応じてエンジニアのイメージで、FETを使うのか、真空管(TUBE)を使うのから始まって、使用するマイクを決定していくのが面白いのである。




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無指向性のマイクは音が良いので、条件が良ければ無指向性で使いたいものだけれど、空調設備の環境も含むルーム・アコースティックを考慮すると、その条件は厳しくなるね。これらのマイクはその指向性をスイッチで切り替えられるものが多いが、どちかというと録音スタジオでは単一指向性で使用することが多いかもしれない。逆に無指向性はルーム・アンビエンス自体を録ることに使うこともあるね。
私が経験したりする中で、都内ではこれらのような用途に使われる傾向があるが、だからと言ってこれだけの使用用途ではないことを忘れてはいけないね。
またヴィンテージものも多いので、都内のスタジオにはそれほど本数が存在しないものもあるし、毎回必ず用意できるとは限らないのも実際の話なんだ。
この中で、私が最もよく使用しているものを挙げるとしたら、ショップスのCMC55UかCMC56Uというところかな。弦、ピアノ、ハープ、木管などクラシカルな楽器の収録時に非常によく使っているし、オケのワンポイント録りとしても使っている。ある意味、一番好きなマイクだし、私のメインマイクといっても過言ではないかもしれないね。帯域が広いことが一番の理由なんだけど、1970年代に発売してから、三十数年以上、現在に至っても愛用しているよ。
最後に当然のことながら付け加えると、優秀なマイクを使ったからと言って必ずしも音が良く録れるとは限らないということ。トータルな総合力が音のクオリティに影響してくる訳だからね。


#19 スピーカー調整 [モニタースピーカー]

今日の天気 : [ ]
�哇
大島です。
今日は後日行う、5.1chのサラウンドMIXのために、先生とゼネラル通商の富沢さんと共に音響塾スタジオ内のスピーカー調整を行いました。スピーカーはdynaudio Acoustic AIR Seriesのサラウンドシステムで、今回はパソコンと接続して、AIR PC-IPというソフトウェアによりそれぞれのスピーカーを規定のレベルに調整していきました。
このAIR PC-IPを使うとコンピュータ上から各々のスピーカーをデジタルで管理できるのが、AIR Seriesの特徴でもあり、微調整やプリセットの保存・読み出しが容易に行えます。

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調整には音圧計が必要で、各スピーカーから順番にピンクノイズを出し、音圧レベルをそろえる為に使用します。
このとき音圧計のフィルターはC特性、メーターレスポンスをSLOWモードにします。
次にリスニングポジションでの耳の高さになるように音圧計を三脚などを使って固定します。
そしてまずLchから一定レベル(今回は-20dB)のピンクノイズを出し、音圧計を見ながらアンプのボリュームで目的の音量まで上げて、スタジオでは85dB、家庭では75dBになるようにし、その位置を固定します。この85dBでのボリュームの位置をマーキングしておくと、基準ポイントとなり作業時に便利になります。その後、1chごとにAIR PC-IP側から各スピーカーの音圧を調整していきます。

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映画用の調整の場合、フロント三本(L、C、R)はそれぞれ85dBとなるようにし、リアのLs、Rsは二本で同時に出したときに85dBとなるようにするのですが、リアのLs、Rsは単体で81dB程度にしておくと、同時出力した時におおよそ85dBの出力が得られると先生から教わりました。最後にLFEは88dBとなるように調整します。
これが大まかな調整方法で、これを怠ると、各スピーカーから出る音の位相差で気持ち悪く聴こえたり、低域が減ってしまったりといった現象が起きてしまいます。
スタジオではモニター環境は最も重要な要素の一つなので、日ごろの調整は欠かせないものだと思います。


#18 ボーカル録音の朝 [スタジオの管理]

今日の天気 : [ ]
�哇
大島です。
今日は某アーティストのボーカル録音でした。スタジオで作業のある日は二時間前までには入り、準備するようにしています。スタジオ清掃から始まり機材の立ち上げ、マイクセッティングと順番におこないます。ボーカル録音に必要な機材は、マイク、ヘッドアンプ、そしてレコーダーであるプロツールスとなります。エンジニアによってはコンプレッサーやイコライザーを通して録音を行う事もあります。今日はマイクロフォンがノイマンのU67、プリアンプがFM ACOUSTICS,コンプレッサーがチューブテックのCL1Bで、これが先生のセッティングとなります。その後、スコア、歌詞のプリントを人数分コピーする事も大切な仕事の一つです。そして歌詞にカウンターを振り、すぐに言われた箇所を出せるようにしておく事も重要です。ブース内も、アーティストが出来るだけ気持ち良く歌える様、気配りが大切です。飴を用意しておいたり、椅子を用意したり、先日の女性ボーカル録音時では、花束を急遽用意してブースに飾ることで少しでも気持ちよく歌える工夫をする事もありました。コンデンサーマイクは湿気には弱いですが、アーティストのパフォーマンスの為であれば、加湿器をブース内に置く事もあります。ここまで準備ができたら後はレコーディングが開始されるのを待ちます。スタジオの朝はあっという間に時間が過ぎていきます。


#17 ベースの録音について [マイクロフォン]

今日の天気 : [ ]
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田中です。今回はベース録音について話そう。

まずエレキベースだが、基本はDI(ダイレクトボックス)を使用したLine録りだろう。
代表的なDIとしてはCountrymanの TYPE85 DIRECT BOX、BSS Audioの AR133 Active DI BOXなどが挙げられるが、これらFETを使用したものや、各スタジオにも独自に開発したDIがある場合もあるし、ジャンセンのようにトランスを使ったDIも存在する。もちろんBassAmpを鳴らすミュージシャンもいるが、その場合はLineとマイクと二通り録っておき、Mix時にLineとマイクを文字通りMixする方法をとっている。

BassAmpを録音する場合の私のマイクセッティングでは、エレクトロボイスのRE20、シュアのSM57、ノイマンのU87などを使用している。ベースはご存知の通り低域のエネルギーが多いので、少なからずマイクスタンドに振動として伝わり音に影響することを考慮して、前記のマイクすべてにサスペンションを使用して振動を吸収している。RE20、 U87などにはオリジナルのサスペンションが用意されているが、SM57にはオリジナルのサスペンションはないのでオーディオテクニカのサスペンションを使用している。このオーディオテクニカのサスペンションは非常に優れたものでショップスなど棒状のマイクにはどれにも使えるので重宝しているよ。

次にアコースティックベースだけど、アコースティックベースという言いかたよりコントラバスやウッドベースの方が伝わりやすいかな。コントラバスはストリングスセクションの中のベースで多人数での演奏が多くマイクの距離はfarとなる。対するウッドベースはJAZZやPOPSなどで比較的ピッツィカート(指で弦をはじく)奏法の多いベースで、演奏者は一人でマイクの距離はnearとなる、という認識で話は通じるだろう。(ちなみに、オーケストラではダブルベースという表記や言い方もある。)マイクセットもコントラバスとウッドベースではおのずと違ってくる訳で、コントラバスはノイマンU67やショップスCMC55、CMC56など、ウッドベースではノイマンM49、U47、U87を使用している。またウッドベースではタッチマイクをつけている楽器も多く、その場合LineOutが出ているのでDIを使用することも多いのが実際である。

音楽のBase(土台)をつかさどるBass。一般的にも土台がしっかりしていなければ何事も上手くいきません。音楽もさることながら仕事も人生も。このように土台が非常に大事であることは趣味でベースを弾いている大島君も理解できるでしょう。


#16 ドラムの録音について[マイクロフォン]

今日の天気 : [ ]
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田中です。
コンデンサーマイク、ダイナミックマイクなどの種類やある程度の特性などを調べた大島君のレポートに加え、私が経験してきたマイクの使い方や各音楽スタジオでの現状を伝えたいと思う。
基本的にマイクは完成度が高いと思っているので、プロ用のマイクに限って言えばどのマイクをどんな楽器に使用しても良いと思っている。とは言っても大島君は迷うと思うので、最近の音楽スタジオで私が使用しているマイクについて順を追って説明しよう。
まず今回は、「リズム録音」。これは、ドラム、ベース、ピアノ、ギター、ラテン・パーカッションなどで構成された、ポップスなどでは基本となる録音であるといえるね。
ドラムの場合、各部にそれぞれマイクを立てる訳であるが、主に以下のようなセッティング例が多い。
Kick(キック);ゼンハイザーMD421、 ノイマンU47FET、 AKG D12、 オーディオテクニカATM25など
Sn(スネア);ゼンハイザーMD421、シュアSM57など
Toms(タム);ゼンハイザーMD421、シュアSM57など
H/H(ハイハット);シュアSM57、AKG451など
Cymb(シンバル);AKG 414,451,452、サンケンCU41、ノイマンU87系
O/H(オーバーヘッド);BK 4006,4011、ショップスCMC-55,56、ノイマンU87系でも可

上記のように多数のマイクを使用した場合は、たくさんのマイクの音をミックスしなければならなくなる訳だが、これはやはり非常に難しいものである。私の場合の基本はドラムを一つの音源と考え、まずオーバーヘッドのマイクでバランスを聞くことにしており、その後で足らないものを少しずつミックスに加えていくという方法で進めている。だから録音時すべてのドラムの部品にマイクは立てても、ミックス時にそれらをすべて使用するとは限らないのが実際であるが、条件が許されるなら、なるべく多くのマイクを立てて録音しておけば、後で使うマイクを選べるのでミックス時に有利になるというものなんだ。さらに、アドバイスしておけばnearに立てたマイクよりfarの方が音が良いということを知っておくべきであるね。その理由は、なるべくfarの方が楽器の鳴りをより多く録れるからで、この楽器の鳴りを録るという事がとても重要なポイントであると私は思っている。例えばスネアの場合は1mもマイクを離してみればスネアらしい良い響きが録れるが、ただそれではドラムセットのスネアとしては、各部品とのセパレーションがとれず成り立たなくなってしまうのが実際の話だね。スネアなどはリムより中ほどにマイクを立てるようにするのだが、そうするとスネアのボトム側の響き線の音は録りにくくなってしまうので、ボトム側にもやはりマイクが必要になる、というようにマイクのセッティングを考えていくべきだろう。このようにスネアドラムはボトム側にもマイクを立て、響き線を録るのがオーソドックスになっているが、私の場合はタムにもボトム側マイクを立て、タム自身の響きを増やすことも心がけているよ。これらの場合、上下のマイク間の位相を反転させなくてはならないことは大切なポイントであるので憶えておくように。ただこのタムにもボトム側をセッティングする方法はマイクの数も倍になりライン数(回線数)も増えるので、余裕のあるスタジオやセッションでないと実践出来ないというのも実際の話なんだ。まあ昔は上から一本のマイクでドラムを録っていた時代でも十分良い音がしていた事を思えば、時代と共に技術も進歩したことにより、現在のようなスタイルになってきたともいえるだろうね。
最後に現在、ドラム録音にダイナミックマイクを多用するのはダイナミックマイクが比較的音圧に強く、かつ指向性がコンデンサーマイクより鋭いという理由からであるというのも忘れてはならない。それにより各マイクのかぶりが少なくなるので、結果として音色が作りやすくなる訳である。私は今までに全てのマイクをノイマンU87のような指向性の広いコンデンサーマイクで収録したケースも何回か経験しているが、結果として非常にパワフルで音色も申し分ないもののシンバル類のかぶりがきつく、その後にだいぶ苦労した覚えがあるよ。かぶりを抑える為、ドラムの場合は音源から数センチの所にマイクを立てることが多いが、それにより近接効果により低域が膨らんでしまうので、大島君のレポートにもあるように低域がそれなりに調整してあるダイナミックマイクが使い易いといえるだろう。
とりあえず今回はこのくらいにしておこうかな。
それでは、良いお年を。