#16 ドラムの録音について[マイクロフォン]

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田中です。
コンデンサーマイク、ダイナミックマイクなどの種類やある程度の特性などを調べた大島君のレポートに加え、私が経験してきたマイクの使い方や各音楽スタジオでの現状を伝えたいと思う。
基本的にマイクは完成度が高いと思っているので、プロ用のマイクに限って言えばどのマイクをどんな楽器に使用しても良いと思っている。とは言っても大島君は迷うと思うので、最近の音楽スタジオで私が使用しているマイクについて順を追って説明しよう。
まず今回は、「リズム録音」。これは、ドラム、ベース、ピアノ、ギター、ラテン・パーカッションなどで構成された、ポップスなどでは基本となる録音であるといえるね。
ドラムの場合、各部にそれぞれマイクを立てる訳であるが、主に以下のようなセッティング例が多い。
Kick(キック);ゼンハイザーMD421、 ノイマンU47FET、 AKG D12、 オーディオテクニカATM25など
Sn(スネア);ゼンハイザーMD421、シュアSM57など
Toms(タム);ゼンハイザーMD421、シュアSM57など
H/H(ハイハット);シュアSM57、AKG451など
Cymb(シンバル);AKG 414,451,452、サンケンCU41、ノイマンU87系
O/H(オーバーヘッド);BK 4006,4011、ショップスCMC-55,56、ノイマンU87系でも可

上記のように多数のマイクを使用した場合は、たくさんのマイクの音をミックスしなければならなくなる訳だが、これはやはり非常に難しいものである。私の場合の基本はドラムを一つの音源と考え、まずオーバーヘッドのマイクでバランスを聞くことにしており、その後で足らないものを少しずつミックスに加えていくという方法で進めている。だから録音時すべてのドラムの部品にマイクは立てても、ミックス時にそれらをすべて使用するとは限らないのが実際であるが、条件が許されるなら、なるべく多くのマイクを立てて録音しておけば、後で使うマイクを選べるのでミックス時に有利になるというものなんだ。さらに、アドバイスしておけばnearに立てたマイクよりfarの方が音が良いということを知っておくべきであるね。その理由は、なるべくfarの方が楽器の鳴りをより多く録れるからで、この楽器の鳴りを録るという事がとても重要なポイントであると私は思っている。例えばスネアの場合は1mもマイクを離してみればスネアらしい良い響きが録れるが、ただそれではドラムセットのスネアとしては、各部品とのセパレーションがとれず成り立たなくなってしまうのが実際の話だね。スネアなどはリムより中ほどにマイクを立てるようにするのだが、そうするとスネアのボトム側の響き線の音は録りにくくなってしまうので、ボトム側にもやはりマイクが必要になる、というようにマイクのセッティングを考えていくべきだろう。このようにスネアドラムはボトム側にもマイクを立て、響き線を録るのがオーソドックスになっているが、私の場合はタムにもボトム側マイクを立て、タム自身の響きを増やすことも心がけているよ。これらの場合、上下のマイク間の位相を反転させなくてはならないことは大切なポイントであるので憶えておくように。ただこのタムにもボトム側をセッティングする方法はマイクの数も倍になりライン数(回線数)も増えるので、余裕のあるスタジオやセッションでないと実践出来ないというのも実際の話なんだ。まあ昔は上から一本のマイクでドラムを録っていた時代でも十分良い音がしていた事を思えば、時代と共に技術も進歩したことにより、現在のようなスタイルになってきたともいえるだろうね。
最後に現在、ドラム録音にダイナミックマイクを多用するのはダイナミックマイクが比較的音圧に強く、かつ指向性がコンデンサーマイクより鋭いという理由からであるというのも忘れてはならない。それにより各マイクのかぶりが少なくなるので、結果として音色が作りやすくなる訳である。私は今までに全てのマイクをノイマンU87のような指向性の広いコンデンサーマイクで収録したケースも何回か経験しているが、結果として非常にパワフルで音色も申し分ないもののシンバル類のかぶりがきつく、その後にだいぶ苦労した覚えがあるよ。かぶりを抑える為、ドラムの場合は音源から数センチの所にマイクを立てることが多いが、それにより近接効果により低域が膨らんでしまうので、大島君のレポートにもあるように低域がそれなりに調整してあるダイナミックマイクが使い易いといえるだろう。
とりあえず今回はこのくらいにしておこうかな。
それでは、良いお年を。